IPS、CIP(技術開発、知財の問題解決)の手法と他の類似手法との比較一覧

2015.07.27
技術開発、知財に関わる代表的な問題開発手法を列挙しました。(* I-TRIZの手法については背景色をラベンダー色としています。)
手法名適用分野等開発者
運用機関
手法の概要手法の手順I-TRIZと比較した利害得失
IPS
(Inventive Problem Solving)
対応ソフトウェア
IWB
(Innovation WorkBench)
発明的問題解決
(技術的難問の解決)
1994年
アイディーション・インターナショナル社
アイディエーション・ジャパン(株)
製品の開発や使用に関連して遭遇する技術的な難問を克服する目的で使用する強力な思考手順です。IPSはすべての技術分野で、研究、開発、生産技術、安全管理、品質管理、品質保証などに関する問題の解決に使うことができます。 1.目標の確認
(1)システムアプローチ、資源把握
2.課題のモデル化
(1)プロブレムフォーミュレーションと方針決定
3.アイデアの発想
(1)オペレータを使ったブレーンストーミング
4.方策案のまとめ
(1)アイデアの分類
(2)方策案の単純化
5.結果の評価
(1)二次的問題の解決
(2)不具合の予測と予防
(3)進化のパターン/ラインの適用
(4)実行計画の策定
機能同士を原因と結果の関係で連鎖した因果関係モデルにより問題のメカニズムが明確化されるため、領域内も問題点を網羅的に検討できる。
因果関係モデルから得られる具体性のあるオペレータ(過去の技術者が繰り返して使ってきた考え方の類型)を手がかりとして、参加者を解決策の存在する領域の方角にガイドしてゆくガイド付きブレーンストーミングを行い、効率のよいアイデア発想ができる。
CIP
(Control of Intellectual Property)
知的財産の価値を制御する
特許回避と発明・特許強化、発明の評価の実施
2003年
アイディーション・インターナショナル社
アイディエーション・ジャパン(株)
特許回避、発明強化、発明評価といった観点の基に、知的財産の価値を増加させるための系統的なプロセスを提供する。
【特許回避】
特許発明の弱点を明らかにして、第三者による特許迂回の予防または自社が特許侵害にならない製品の開発を行えるようにする。
【発明強化】
発明の弱点の除去および様々な改良について発明的な解決策を見つけることで、技術パラメータの向上、コスト削減、新しい特許の獲得、新しい市場や応用分野を見つけ出す。
【発明評価】
複数の選択肢を記述した多肢選択式テーブルを利用して、発明の価値を低減するマイナス要因の検査、発明の技術的なレベルの評価、発明の進化の可能性の評価、発明の商業価値の決定を行い、必要な対策を講じるための指針を得る。
1.既存の発明(第三者または自社あるいは、特許されたものまたは特許されていないもの、のいずれのものでも可)について、発明評価を行うことで、特許回避または/または発明強化の必要性を認識する。
2.特許回避を検討する場合には、請求項の構成要素について、それらの階層的、構造的関係および原因結果の関係を視覚的に明確化した因果関係モデルを作成し、当該発明についての弱点や不具合予測して、検討すべき指針を入手したうえで、その改良案を創出する。
3.発明強化を検討する場合には、発明の構成、作用、効果について、それらの階層的、構造的関係および原因結果の関係を視覚的に明確化した因果関係モデルを作成し、当該発明についての弱点や不具合予測して、検討すべき指針を入手したうえで、その改良案を創出する。
I-TRIZの「知的財産制御(CIP)」は、知的財産分野の問題解決にTRIZを最も早く適用した手法であり、その実績を豊富に持っている。
日本では、知的財産の価値を向上させることに積極的に取り組んでいる企業が少ない。
知的財産分野の問題は、技術と法律といった相性のよくない問題を取り扱うため、発明者である研究者、技術者と知的財産担当者との情報交換がうまくいっていないケースが多い。
そこで、誰にでも理解しやすい「因果関係モデル」を関係者(経営者、営業担当も含む)間の共通のコミュニケーション・ツールとして使用することで、経営戦略を支えるための知的財産戦略の策定、実行に取り組みとよい。
ハイブリダイゼーション
(Hybridization)
ハイブリッド法
様々な市場で売れる消費者向けの新製品を得るための法則と方法論 2005年
バレリー・プルシンスキー
アイディーション・インターナショナル社
アイディエーション・ジャパン(株)
発明的問題解決理論(TRIZ)と生物進化の考え方を結合して新製品開発につなげる、新しいパワフルなアプローチ(製品のハイブリッド化)である。
技術(成熟技術と若い技術)が出揃って、それぞれの長所短所がわかってくると「統合」や「ハイブリッド化」など様々に組み合わせた発明が行なわれるようになる。これは様々な技術の良いところをもっとも効果的に組み合わせようとする試みの過程である。
「統合」や「ハイブリッド化」は何度も繰り返して行なわれることがある。初めは当初の技術と技術とを組み合わせる。次にはうまくいった組合せ同士をもう一度組み合わせたり、うまくいった組合せをもう一度当初の技術のどれかと組み合わせる、といった具合である。
1.出発点となる現在のシステム(製品またはプロセス)を選び、そのシステムの主な機能(使用目的)を書き出す。
2.そのシステムの短所をリストアップし、その短所に関連している有益な特性をリストアップする。
3.主な機能がシステムと同じで、システムと長所・短所が逆になっている他のシステムを1つ選ぶ。
4.ハイブリッド化のベースとするシステムとして、当初のシステムか、上で選んだ他のシステムかのどちらかを選択する。
5.選択しなかった方のシステムが持っている長所をリストアップする。
6.当初の構想として、ベースとしたシステムのすべての長所と、他方のシステムからもらってきたい長所とをすべて備えたシステムを描く。
7.当初の構想から出発して、ベースとしたシステムのある部分を他方のシステムの良い特性をもった要素に置き換えるという観点で知恵を絞って順次改良してゆく。
「ハイブリダイゼーション」は、そもそもシステムの成熟期に発生する現象である。
「ハイブリッド法」では、二重化、多重化という組み合わせを積極的に実行するための具体的なバリエーションを明らかにしているので、既存商品・サービスの改良に有効な手法である。
I-TRIZの「「ナレッジ・データベース(KW)」と「ハイブリッド法」とを併用することで、既存商品・サービスの改良の際のスピード・アップが図れる。
等価変換理論 歴史発展の論理の視点による本質移転開発 1944年
市川亀久彌
特定非営利活動法人日本創造力開発センター
あらゆる発明や開発は、発明/開発者が意識しているかどうかは別として、よく知っているあるものに新たに必要な観点を導入してそのものの固有の不要な条件をそぎ落として本質を抽出し(抽象化し)、今度はその本質に発明や開発したいものに必要な条件を加える、というプロセスを経て完成する。 等価変換フローチャートの手順
1.背景(問題を生み出した経験または対象)
2.問題の提起(目標の設定)
3.viの設定(観点の確立)
4.ε(問題の本質)
5.ΣAο(εを含んだ事例群=Aοライブラリー)
6.Aο (選び出された事例)
7.c(限定条件)の抽出
8.cε(本質と限定条件)結合
9.思考実験・試作
10.目標との一致度合いの検定
11.Bτ(目標を満足する創造)
等価変換理論がヒントにするアナロジーは具体的なものであるのに対し、TRIZがヒントにする一般的な解決策は抽象的なものである点で両者は異なっています。しかし、いずれの場合も具体的な解決策を完成させるためには、具体的な問題の分野の既存の知識と新たに調査して入手すべき知識が必要であるということです。
VE
(Value Engineering)
品質を維持したままでコストダウンを行う 1947年
米国GE社のL.D.マイルズ
公益社団法人日本バリュー・エンジニアリング協会
製品やサービスの「価値」を、それが果たすべき「機能」とそのためにかける「コスト」との関係で把握し、システム化された手順によって「価値」の向上をはかる手法である。 Value(価値)=Function(機能)/Cost(コスト) 1.機能定義
VE対象の情報収集、機能の定義、機能の整理
2.機能評価
機能別コスト分析、機能の評価、対象分野の選定
3.代替案作成
アイデア発想、概略評価、具体化、詳細評価
「VE」では、アイデア発想段階で使用する独自のツールを用意していない。そのため、一般的な発想法であるオブボーンのチェックリストを使ったブレーンストーミングを使ってアイデア出しを行うことが多い。しかしながら、「大きくしたら、小さくしたら、・・・」のような抽象的なチェックリストでは、具体的な改善案を提案することが難しい。
「VE」のアイデア発想段階を補うものとしてI-TRIZが有効である。
シネクティクス 異質馴化 馴質異化 1950年
ウィリアム.J.J.ゴードン
シネクティクス社
自分にはまったく未知のもの(領域)のことをヒントに自分の問題解決を着想する「異質馴化」と、既知のものを新しい視点から見ることで新しい着想を得る「馴質異化」を駆使した「類比思考」を行う。
直接的類比:自然界,生物等の直接似たものを探し出して,それをヒントにアイデアを発想する。
擬人的類比:問題を自分がその要素になりきって,その視点から発想する。
象徴的類比:問題を抽象化して,シンボリックな視点から幅広く発想する。
1.問題を提示する
2.専門家による問題分析
3.解決の試案を発想する
4.解決目標の明確化
5.アナロジーによる発想を展開する
→直接的類比、擬人的類比、象徴的類比
6.アナロジーの選択
7.選択したアナロジーをさらに細かく検討し、ヒントとなりそうなものを探し出す
8.目標への適合
9.解決案の作成
ウィリアム.J.J.ゴードンは、与えられた問題(Problem as Given = PAG)を把握された問題(Problem as Understood = PAU)に置換する」必要性を述べて、真の問題を明らかにすることを指摘している。「眼鏡の改良」というPAGは、「眼球の焦点距離を補正するにはどうしたらよいか」というPAUであるとすると、コンタクトレンズが生まれる。つまり、「観点を変えてみれば同じ働きをする別のものにする」といった発想はTRIZに通じる。 TRIZのSLP(小さな賢人)はシネクティクスの擬人的類比を改良したものである。
NM法 自然界や身の回りの技術の類比発想 1965年 中山正和 NM-T型は、最後に出されたコンセプトの中から、使えそうなアイデアを見つけだしていく。A型、S型の前段として行われることが多い。
NM-A型は、空間結合によるもので、T型で出たコンセプトを仮説を立てながら、一見関係なさそうなものにつながりを見つけだそうとするもの。新技術や用途開発などに使われる。
NM-S型は、時間結合によるもので、A型とは異なり、T型で出たコンセプトに因果関係を見つけ出し、関係づけようとするもの。営業戦略の立案などに使われる。
NM-H型は、装置や道具の改良などに使われる。アナロジーの背景を探った段階で、出てきた背景毎に、「これは使えないか」と問い直していく。
1.課題(TM)を決める
2.キーワード(KW)を決める
3.類比を発想する(QA)
4.アナロジーの背景を探る(QB)
5.アイデアをQBとテーマを結びつけて発想する(QC)
6.QCを使って解決案にまとめる(ABD)
「NM法」では、アイデア発想のヒントになるアナロジーを自然界や身の回りのものに求めるが、幼年期、少年期に自然に触れる機会の少なかった人には、それらのイメージがないため、これらのヒントが使えない。
I-TRIZでは、約500種類の発想概念(オペレータ)と約2,000の具体例がアイデア発想のヒントとして使用できるので、その点の問題はない。
QFD
(Quality Function Deployment)
品質機能展開
顧客が要求する品質を基に設計品質を決定し実現する
JIS Q 9025:2003
1972年
赤尾洋二
水野滋
一般財団法人日本科学技術連盟
顧客のニーズを技術に結びつけ、どのニーズに答え(製品企画)、どの技術を開発するかを決定する作業であって、ニーズ(要求品質)と技術(品質特性)を結びつけたマトリックス(品質表)を作成し、品質表上で重要度の採点を行い、その結果をもとに製品を企画し、技術を開発する。最終的には、その設計の意図(品質特性)を製造工程まで展開する。 1.ユーザーの要求を把握する
2.原始データを要求項目に変換する
3.要求項目から要求品質に変換する
4.要求品質展開表を作成する
5.品質要素展開表を作成する
6.品質表を作成する
7.企画品質を設定する
8.要求品質重要度を品質要素重要度に変換する
9.設計品質を設定する
成熟期にあるシステム(商品やサービス)の場合には、ユーザ自体がニーズを理解していないため、顧客の声(VOC:Voice of customer)を聞いても、正しいユーザの要求が入手できない。そのため、品質機能展開の要求項目の信ぴょう性が疑わしいものとなり、設計された商品やサービスが売れないという現象が起きる。
I-TRIZの「戦略的世代進化(DE)」を使用する場合には、顧客の潜在ニーズを満足する商品、サービスの提案をするといった意識が働くようになっている。
エンジニアリングの方法 創造的問題解決の技術 1976年(日本語出版)
エドワードV.クリック
問題とは、ある状態(または状況)から他の状態に変換したいという欲求に導かれて発生するものであって、解決策とは、望まれている変換を達成してくれる一つの手段である。
解決策の評価基準として、「エレガンス性=その解がなしとげる目的/その解の複雑性」を採用する。
1.問題の設定(設計プロセス1)
2.問題の分析(設計プロセス2)
インプット、アウトプット、仕様、制約条件、評価基準
3.代替解決案の探求(設計プロセス3)
解が有している特性に対して系統的に質問をあびせる
4.代替案の評価(設計プロセス4)
5.詳細設計(設計プロセス5)
I-TRIZの「システムアプローチ」と共通する概念(インプット、アウトプット、要求仕様、制約条件、評価基準)が採用されている。
解決策の評価基準である「エレガンス性=その解がなしとげる目的/その解の複雑性」も、I-TRIZの理想性の概念に通じる。
エンジニアリングデザイン 工学設計の体系的アプローチ 1977年
G.ポール
W.ベイツ
製品の企画から設計および生産プロセスと品質保証の検討まで製品開発の一連の過程について、その本質を一つの体系にまとめあげた手法である。
全体機能は、下位課題に対して、それぞれ識別可能な下位機能に直接分割することができる。
技術システムにおける相互作用には、機能的相互関係としての機能構造、物理的相互関係としての動作構造、構造的相互関係としての構築構造、システム的相互関係としてのシステム構造とがある。
1.状況を分析する
2.探索戦略を定式化する
3.製品アイデアを見つけ出す
4.製品アイデアを選択する
5.製品を定義する
6.明確にし推敲する
7.設計する
システムの目的機能の入力と出力は、それぞれ物質、エネルギー、信号(情報)の3つの基本概念としており、TRIZの「物質-場分析」に通じる。
問題には、(1)望ましくない初期状態(不満足な状況の存在)、(2)望ましい目標状態(満足な状況の実現)、(3)望ましくない初期状態から望ましい目標状態への移行を妨げる障害、三つの要素がある。設計解を見つけ出すことは、矛盾を解決することが含まれるとし、TRIZの概念と一致している。
FBS
(Function Breakdown Structure)
システムやモノの最適な構造・構成のイメージを創り出す 1976年
江崎通彦
システムやモノに与えられたテーマ(課題)実現のために、階層的な機能をイメージ化し(そのためのモノやシステムの構造化を図る)、各イメージ実現のためのアイデアを創出する方法である。 1.課題(テーマレベルⅠ)
2.要するにそれでわれわれは何をしようとしているのか?(機能レベル)
3.そのためのアイデア2~3案は?(アイデアレベル)
4.アイデアの比較結果は?
5.どのような区分に分けてそれを実現したらよいか?(テーマレベルⅡ)
6.それで何をしようとしているのか?(機能レベルⅡ)
7.そのためのアイデア2~3案は?(アイデアレベルⅡ)
「FBS」は、アイデア発想の結果得たコンセプトに形を与えるための思考プロセスを明らかにしている。
I-TRIZでは、積極的にスケッチを描くことをしないが、機能を実現するイメージを描くことで別のアイデアが創出されることもあり、商品開発が目的である場合には有効である。
SIT
(Systematic Inventive Thinking)
構造化発明思考法 1980年代
Genedy Filkovsky
発明的解決策は、どのありきたりの解決策にも共存していない二つの特有の性質を持っている。第一の性質は、新しい要素を加えられることがないこと(CW:閉世界条件)である。第二の性質は, 二つの変数の基本的な関係が質的に変化したこと(QC:質的変化の条件)である。 1.問題の定式化
問題解決の課題の目標を二つの十分条件を用いて設定する。CW(閉世界)条件が現在の制約に追加され、一方、QC(質的変化)条件が目標を変更する。
2.必要とされる物理的目標状態を導く概念的解決策を定式化し、3へ進む。
3.新しい操作を実行する仮想的なオブジェクトを追加することにより、システムが一時的に拡張される戦略(統合法、乗算法)を採用する。
4.2ができなければ試行錯誤のプロセスにおいて、既存オブジェクトたちとその組織の構造を変える再構築戦略(除算、可変性の増加)を採用する。
5.拡張戦略(修正)または再構築戦略(移行)により、アイデアを発想する。
機能を決定する前に一つの形を創ることによってアイデアを作り出すことは、心理学者のロナルド・A・フィンクらによって、「形に機能がついてくる 」思考として発表されている。多くの実験の結果、ロナルド・A・フィンクらは、「機能より前に形を決定するように制約されたとき、被験者各人は一層創造的になる」ことを示した。
このような考えは、I-TRIZの「進化のパターン/ライン」を使ったアイデア発想法の思考プロセスと同じであり、その有効性が立証されていると考えてよい。
創造設計原理
創造設計学
設計における課題設定、創造設計、知識活用
創造設計データベース
http://www.sydrose.com/creativedesignengine/
1990年
畑村洋太郎
中尾政之
思い(顧客要望、潜在欲求)を言葉(課題、要求機能、顕在欲求)に、言葉を形(設計解、解決案)に、形をモノ(生産条件、構造、形状、具体策)にするための設計思考過程を思考展開図で可視化する。思考展開図は、機能、制約、機構、構造、選択といった要素を連鎖的に表現することで作成する。設計解は、公理設計を使って最適化する。
設計者が設計時に頻繁に考える機能を大別すると、動かす、測る、作る、強くする、変える、考える、の6種類の高位機能に分類される。高位機能は思考の対象分野に強い関係あって、たとえば、加工分野の「作る」では、削る、磨く、組み立てる、固定する、などの高位機能群が、材料分野の「強くする」では、破壊する、変形する、腐食する、摩耗する、などの高位機能群が含まれる。
思考展開図を作成する段階で、(1)課題を構造化する、(2)心理的惰性から脱出する、(3)目的化した手段を再構築する。
思考展開図を作成する過程で、何かしらの叩き台的なアイデアが生まれたら思考演算子を使って目的とする設計解を得る。
思考演算子は空間、時間、作用、物質、現象、制約の6個の思考対象に大別され、思考対象にはそれぞれ8個程度の思考演算子(四則演算、機能逆転、場の視覚化、同角写像、第3物質挿入、制御排除、時間分割)を設けている。
創造設計エンジンのソフトウェアが完成されており、大学生が創造設計演習で使用しているとのことである。
また、「創造設計データベース」が公開されているので、I-TRIZを実施した際に得られた解決コンセプトを実装する設計段階でこれを利用するとよい。
(http://www.sydrose.com/creativedesignengine/)
公理設計
原著:The Principles of Design N. P. Suh, Oxford University Press, 1990
最適設計案の探索 1980年代
Num Suh
設計の必要機能が互いに独立であるときに、“良い"設計が行われる(独立公理)と、"情報"量の最小化が達成されていることにより“良い"設計である(情報公理)という2つの公理は、その時合成して作られた解決策がどの程度“良い"かを調べることで、最良な設計解を導き出す。 "1つ目の設計公理は「独立公理」と呼ばれ、要求機能が互いに独立している設計を是とする。
たとえば、蛇口の設計において、温度の調整と水量の調整という2つの要求機能を満たす設計解を考える(干渉設計)。温水と冷水の量を調整するレバーを設けた場合、温度と水量は同時に調整される(2つの要求機能が互いに干渉する)。一方、水量比と全体水量を調整するレバーを設けた場合、温度と水量は独立に調整される(独立設計)。
もう1つの公理は「情報公理」と呼ばれ、情報量が最小の(成功確率が最も高い)設計を是とする。
情報量は、要求機能のばらつきの範囲と、それが設計の許容範囲を満たす範囲の比を用いて算出される。
公理的設計においては、独立公理に基づいて独立設計を満たす設計解を得るとともに、それらの設計解を情報公理に基づいて定量的に比較することにより、最良の設計解を導出する。
スーの設計プロセスに関する流れ図の中の設計者が設計解を生成している「案出と創造」部分に、TRIZの発想段階があてはまる。
一般の設計は「トレードオフ」のバランスを取ろうとするものであるが、TRIZは「トレードオフ」を除去するという考え方である。
コンセプトの有効性を評価する手段を提供している公理および必要機能の評価と各階層問題の取り扱い、という新しい観点を通して、「公理設計」はTRIZの問題定義と問題解決の段階の質を改善する可能性を提供している。
リーン製品開発方式 リーン生産方式を製品開発に応用したイノベーションを系統的に生み出す方法 1993年
アレン・ウォード
デュワード・ソベック
ゴール・システム・コンサルティング株式会社
未知の領域に対して少数の代替案しか考え出さずに設計し始めるといった「ポイントベース開発」から、多数の代替案を考え出して並行して評価しながら解決案を徐々に絞り込んでいく「セットベース開発」への転換を図ることで、詳細設計での手戻りを防止し、開発効率を向上させる。 1.顧客関心事の関係を示すトレードオフ曲線の作成
→設計空間内の領域を徐々に狭める
2.設計パラメータ間の因果関係図の作成
3.LAMDAサイクルの実行
4.簡単な実験による知識獲得と記録
5.過去の解決策の知識を有効利用する
構想設計、試作段階の思考プロセスを明らかにしている点で、I-TRIZを実施して得らえた解決コンセプトを詳細設計につなげる手法として有効である。
トレードオフ曲線による管理手法は相反する2つの特性値間の最適化であり、その先に相反する2つの特性値間の矛盾を解消する「技術的矛盾の解決」が位置づけられる。
USIT
(Unified Structured Inventive Thinking)
統合的構造化発明思考法
技術開発のコンセプト生成過程に集中した技法 1995年
フォード社のシカフス
実地問題に適用して,複数のコンセプトを迅速に生成することをねらう。アルトシュラー、より一層困難な問題の解決を目指、「発明」の技法を目標にしたのとは異なる。USITでは企業の実地問題を創造的に解決するのが目標であ、必ずしも人を驚かせる発明を強調しない。
「問題定義」「問題分析」「解決策生成」の3段階から構成され、フローチャートに従って進む。システムを記述するのに, 「オブジェクト」「属性」「機能」の概念を用いる。解決策生成技法は4種のみで,、オブジェクト、属性、機能、に対応して利用される。
技術の詳細、数値、図面、仕様、コスト、納期などは、考慮の外に置く。
1.問題定義
問題を明確に定義し、最小限のオブジェクト群を選択する
2.問題分析
(1)閉世界ダイヤグラムと定性変化グラフを作る
(2)問題状況と理想状況とのスケッチを描き、粒子群に託す行動と性質を列挙する
(3)(1)、(2)につづき、時間と空間における独自性を分析する
3.解決策生成
(1)属性を操作する
(2)オブジェクトを操作する
(3)機能を操作する
(4)機能を連結する
(5)(1)~(4)によって生まれた解決策を一般化する
(6)解決策を列挙し、報告書を作成する
「USIT」は、問題解決能力を高めるために、問題分析、解決策生成段階を体系化したものの、手順が複雑なもになっている。
解決策を考える場合の考え方は複数提案されているが、具体的なヒントを含んだ知識ベースを使用することがないため、問題分野の知識に詳しい専門家向けの手法といえる。
そもそも、知識ベースをしようしないのであれば、USITよりASITの方が使い勝手が良い。
ASIT
(Advanced Systematic Inventive Thinking)
先進の構造化発明思考法 1999年
ロニ・ホロウィッツ
ジェイコブ・ゴールデンバーク
ドリュー・ボイド
既存の製品を最初に、ASITの5種の思考ツールのうちの一つの線に沿って (概念的に) 変容させる。そのとき、 特定の目標を想定していない。第2段階において、 その新しい (仮想的な) 製品を可能性のあるマーケットとマッチさせる。そのマーケットは次の質問に答えることによって同定される。「われわれの変容させた製品によって、誰が、どんな状況下で、益を受けるだろうか?」
一つの閉世界は, 「その製品を作っているオブジェクトたちのタイプと、その製品のすぐ周辺にあるオブジェクトたちのタイプとの集合」として定義される。ASITの閉世界原理は, 開発者に対して, もとの製品と同じ「世界」を共有する新製品を開発するように制約する。
閉世界条件は、開発者に、既存の製品を置き換えたり、いままで存在しなかった新しい要素を追加したりする代わりに、既存の製品のバリエーションを着想するように制約する。このようにして, ASITで生成された新しいアイデアは, 研究開発努力をまったく必要としない。
1.統合法
既存の構成要素の一つに新しい使い方を与えることによって問題を解決する。
2.乗算法
既存のオブジェクトのコピーでわずかに変容させたものを、現在のシステムに導入することにより、問題を解決する。
3.除算法
一つのオブジェクトを分割して、それらを部分として再編成することにより問題を解決する。
4.対称性の破壊の方法
対称的な状況を非対称な状況に変換することにより問題を解決する。
5.オブジェクトの除去の方法
一つのオブジェクトをシステムから除去することにより、問題を解決する。
機能を決定する前に一つの形を創ることによってアイデアを作り出すことは、心理学者のロナルド・A・フィンクらによって、「形に機能がついてくる 」思考として発表されている。一連のすばらしい実験において、ロナルド・A・フィンクらは, 「機能より前に形を決定するように制約されたとき、各人は一層創造的になる」ことを示した。
「構造化発明思考法(SIT)」から派生した手法には、USITとASITがあるが、使い勝手としてはASITの方がよい。