KW(人、組織、経営の問題解決)と他の類似手法との比較一覧

2015.07.27
人、組織、経営の問題解決に関わる代表的な手法を列挙しました。(* I-TRIZの手法については背景色をラベンダー色としています。)
手法名適用分野等開発者
運用機関
手法の概要手法の手順I-TRIZと比較した利害得失
KW
(Knowledge Wizard)
非技術的問題の解決 1998年
アイディーション・インターナショナル社
アイディエーション・ジャパン(株)
経営者、ファシリテーター、チームリーダーや他の専門家(問題解決の初心者も含みます)のために設計された「ナレッジ・ウィザード」は、人間 が関係するシステム(たとえば、団体、企業、部署、チームなど)の問題状況を分析、解決する強力な新しいツールである。
特に、可能性のある解決ルートを幅広い視野から見つけるために、問題状況について重要な情報を収集、構造化することを手助ける。効果的な改善をまとめ、実現する、「革新の原則」の強力なセットを体系的に適用する。
1.目標の確認
(1)システムアプローチ、資源把握
2.課題のモデル化
(1)プロブレムフォーミュレーションと方針決定
3.アイデアの発想
(1)オペレータを使ったブレーンストーミング
4.方策案のまとめ
(1)アイデアの分類
(2)方策案の単純化
5.結果の評価
(1)二次的問題の解決
(2)不具合の予測と予防
(3)進化のパターン/ラインの適用
(4)実行計画の策定
技術以外の一般的な問題解決向けの「ナレッジ・データベース(KW)」であれば、最初からプロブレム・フォーミュレーション(PF)との組み込まれているので、多くの知識ベースを有する本格的な「発明的問題解決(IPS)」を採用する前のI-TRIZの導入段階に使うとよい。
行動分析学 人間の行動の問題を解決する 1930年代
B・F・スキナー
一般社団法人日本行動分析学会
人間や人間以外の動物の行動の原因を解明し、行動に関する法則を見出し、その知見をもとに、現実の行動をより良い方向に改善する。
行動とそれに伴う状況の変化との関係(行動随伴性)を1単位として行動を観察する。行動の原因を考えるときは、行動の直前から直後にかけて起きる状況の変化に着目する。
人間の行動は、行動の直後に出現した変化(好子)が起こると強化される。行動を実行する際、行動に先行する刺激や条件が行動に影響を与える。
行動には、(1)「目に埃が入る」→「涙を流す」のように、原因となる外界の刺激が現れ、次にそれに対応する行動が起きるものを、レスポンデント行動(反応行動)と、(2)「電機のスイッチを押す」→「明るくなる」のように、行動の後に発生したことが行動の原因になっているものを、オペラント行動(操作行動)との、2種類がある。
行動随伴性を、「水が出ない」→「蛇口をひねる」(行動)→「水が出る」のように、行動の直前と直後の現象、出来事を連鎖的に表現して、随伴性を変える、原因となるものを抹殺する、代替行動を見つける、強化随伴性を消去する、などで行動を変える。
問題を機能同士の因果関係で捉える点は、I-TRIZのプロブレム・フォーミュレーション(PF)と同じである。 技術の分野でも、人の行動が問題となるものについては「行動分析学」の考え方が適用できる。
KT法 問題解決と意思決定のプロセス 1965年
ケプナー
トリゴー
必要な情報を集め、的確な結論を合理的に導き出すための思考の手順(思考プロセス)を整理し体系化したもの。必要十分な情報を迅速に集め、「事実」に基づく的確な問題解決や最良の意志決定を行い、「思い込み」や「憶測」による誤りを食い止めることができる。
合理的な思考プロセスを組織の中での「共通言語」「共通アプローチ」「共通ツール」として用いることにより、組織の中に存在する多種多様な経験と知識を活かしつつ、問題解決や意思決定の精度と効率を飛躍的に向上させることができる。さらに、個々のメンバーのクリティカル・シンキング・スキル習得にも役立つ。
状況分析(SA:Situation Appraisal)
1.何が問題か(状況ステートメント)
2.その問題はどうなっているか(関心事と分離)
3.その問題を解決するには具体的に何をするか
(ステートメント化)
4.何から手をつけるか
問題分析(PA:Problem Analysis)
1.何がどうまずいか(問題ステートメント)
2.何がおきて何がおきていないのか(IS/IS NOT)
3.何が違うか(区別点、変化点)
4.考えられる原因は何か
決定分析(DA:Decision Analysis)
1.何のために何を決めるか(決定ステートメント)
2.具体的な狙いは何か(目標)
3.考えられる案は(MUSTとWANTを切り分け)
4.それを行うとどんなまずいことがあるか
潜在的問題分析(PPA:Potential Problem Analysis)
1.いつまでに何をしたいのか(実行ステートメント)
2.考えられるリスクは
3.リスクを起きないようにするにはどうするか
4.リスクが起こったときはどうするか
「KT法」は、その知識の習得と実践するための訓練について提供側による厳密な制限があるため、実務レベルで使いこなすまでにクライアント側の負担が大きい。
そのため、現場からのボトムアップによる導入が難しい。
I-TRIZは、オペレータや具体例の全部を参照することを望まなければ、その思考プロセスを身に着けること自体は難しくない。
QFD
(Quality Function Deployment)
品質機能展開
顧客が要求する品質を基に設計品質を決定し実現する
JIS Q 9025:2003
1972年
赤尾洋二
水野滋
一般財団法人日本科学技術連盟
顧客のニーズを技術に結びつけ、どのニーズに答え(製品企画)、どの技術を開発するかを決定する作業であって、ニーズ(要求品質)と技術(品質特性)を結びつけたマトリックス(品質表)を作成し、品質表上で重要度の採点を行い、その結果をもとに製品を企画し、技術を開発する。最終的には、その設計の意図(品質特性)を製造工程まで展開する。 1.ユーザーの要求を把握する
2.原始データを要求項目に変換する
3.要求項目から要求品質に変換する
4.要求品質展開表を作成する
5.品質要素展開表を作成する
6.品質表を作成する
7.企画品質を設定する
8.要求品質重要度を品質要素重要度に変換する
9.設計品質を設定する
成熟期にあるシステム(商品やサービス)の場合には、ユーザ自体がニーズを理解していないため、顧客の声(VOC:Voice of customer)を聞いても、正しいユーザの要求が入手できない。そのため、品質機能展開の要求項目の信ぴょう性が疑わしいものとなり、設計された商品やサービスが売れないという現象が起きる。
I-TRIZの「戦略的世代進化(DE)」を使用する場合には、顧客の潜在ニーズを満足する商品、サービスの提案をするといった意識が働くようになっている。
比較発想法 1974年
金野正
われわれは、あるものについて頭の中で思い浮かべているときでも、実際はそれとは別のあるものを持ってきて、この二つを並べて考えていることが多い。それだけではなく自分ではまったく意識しないうちに何かほかのものと比べていることも少なくない。つまりはっきり意識していようといまいと、日常生活ではしばしば我々は「比較」を行っている。そのような従来からある思考過程をそのまま活用して、比較による発想を取り入れたものである。
比較には、分析という足元を固める目的のほかに、新しい発想を得るためと、得られた発想を評価するための、大きな目的がある。
1.ある対象Aを取り上げ、その中で本質的と思われる要素に注目する。
2.他のものは気にしないで、それだけを取り出す。
3.それを核として必要な要素を補足し、別の対象Bに仕上げる。
「目的発想法」では、目的・手段を体系化していく際に、目的と手段の系統図を作成する。
I-TRIZの「発明的問題解決(IPS)」では、既に問題を抱えているシステムを対象とすることが多いため、原因と結果の因果関係モデルを作成する。
イノベーションを起こすような問題解決を行うなら、目的自体を疑うことも必要になる。そのため、目的手段モデルを使った目的展開が必要となる。
PMD
(Purpose Measure Diagram)
目的と手段の関係を明らかにする 1976年
江崎通彦
われわれが意識することなく行っている課題実現のための考え方、手順、行動を具体化し、問題の解決を図るための手法である。
課題実現のための思考や行動の条件を明らかにし、さらにそれを手順化して、目で見えるように展開したものである。
1.テーマの決定
2.「要するに、何をしさえすればよいのか?」の質問に対する答えのカードを作成する
3.そのカードを「...を...する」ために「...を...する」という順序で、上の方を目的、下の方を手段の関係で図のように縦に並べる
4.カードの過不足を調整してダイヤグラムを完成する上の方は、抽象的な上位目的、一番下の表現は、その目的を実現するためには、「どこから手をつければよいかのエントランス・キーワード」が見えてくる。
「PMD」は、人間の価値観という視点では物事を捉えているため、目的と手段の関係を明らかにする。
I-TRIZのプロブレム・フォーミュレーション(PF)は、機能同士を原因と結果の関係で表しているが、見方を変えると、手段と目的の関係を表しているともいえる。
FBS
(Function Breakdown Structure)
システムやモノの最適な構造・構成のイメージを創り出す 1976年
江崎通彦
システムやモノに与えられたテーマ(課題)実現のために、階層的な機能をイメージ化し(そのためのモノやシステムの構造化を図る)、各イメージ実現のためのアイデアを創出する方法である。 1.課題(テーマレベルⅠ)
2.要するにそれでわれわれは何をしようとしているのか?(機能レベル)
3.そのためのアイデア2~3案は?(アイデアレベル)
4.アイデアの比較結果は?
5.どのような区分に分けてそれを実現したらよいか?(テーマレベルⅡ)
6.それで何をしようとしているのか?(機能レベルⅡ)
7.そのためのアイデア2~3案は?(アイデアレベルⅡ)
「FBS」は、アイデア発想の結果得たコンセプトに形を与えるための思考プロセスを明らかにしている。
I-TRIZでは、積極的にスケッチを描くことをしないが、機能を実現するイメージを描くことで別のアイデアが創出されることもあり、商品開発が目的である場合には有効である。
ステップリストの方法 思考や行動の手順書を作成する 1976年
江崎通彦
具体的な行動を起こすために、落ちのない思考や行動を段階的に手順化するための手法である。
各ステップの内容を「インプットの項目→事前保証活動→アウトプットの項目→事後保証活動」といった因果関係でまとめ、特定のステップの事後保証活動は次のステップのインプットの項目になるように、全ステップを因果関係でつなぐことで、課題を実現するための行動の手順書が完成する。
1.PMDによってメイン・キーワードとエントランス・キーワードを把握する
2.「試作または実行」の「アウトプット項目」にメインキーワードから見て適切なアウトプットの項目名を記入する。
3.「第一次情報収集」の「インプット項目」に1段階のアウトプットに必要なインプット要素を記入する。
4.3を使って2の最終目的を達成するためにはどのような段階(過程)を経て行けばよいかを割り付ける。
5.各段階のアウトプット項目に対するインプット項目事前保証活動、アウトプット項目、事後保証活動は次の段階に結びつく因果関係を持つものとする
6.できあがったステップリストの項目の過不足を調整してステップリストを完成する
DTCN
(Design To Customer's Needs)
問題解決と課題実現のための知識から知恵を作り出す方法 1978年
江崎通彦
(1)問題と課題の関係を明解にし、(2)目的には上位目的と目標レベルの目的があるが、その区分を明解にし、(3)「意思決定のプロセス」という言葉と「意思決定」という言葉の違いを明解にし、(4)PM(プロジェクトマネジメント)とSE(システムズエンジニアリング)の関係を的確・簡潔に説明し、(5)意思決定の・判断のメカニズムについて、決め手になる説明を行い、(6)知識から知恵を創りだす方法を具体的な手順として整理し、(7)ナレッジマネージメントの方法によって知恵を創りだす方法を知識として確立する。 知識から知恵を創り出すために、以下の7つの基本手法を使う。
1.PMDの方法(課題を実現するための意思の方向とあるべき姿を表わす)
2.ステップリストの方法(行動の手順書)
3.FBSの方法(あるべき姿の内容の構造・構成)
4.WBSフェージング・テーマ・テクニック
(検討をするべきテーマを事前抽出する)
5.3-5フェーズ・インプルーブメントの方法
(ステップリストの補助手法)
6.ROメッソド(体制づくりの方法)
7.実施計画書の方法
ソリューション・フォーカス 人と組織の問題を解決する解決志向のコミュニケーション心理学
人に関する問題を解決するには、人とコミュニケーションをとる必要がある
1980年代半ば
スティーヴ・ディ・シェイザー
インスー・キム・バーグ
通常、何か問題があるとき、その問題や原因について考える(問題思考)が、ソリューション・フォーカスでは、問題が解決された状態やすでに解決されている部分について考える(解決思考)。 【3つの原則】
1.壊れていないなら、修復するな
2.一度やってうまくいったなら、またそれをせよ
3.うまくいっていないのであれば、何か違うことをせよ
1.うまくいっているところを探す(成功ポイントの発掘)
2.例外を探す(例外的な成功を見つける)
3.なぜうまくいっているのか考える(成功原因の追究)
4.すでにできていることの中で、繰り返せることを探す(成功状態の拡大)
5.すべてがうまくいっている状態を、明らかにする(成功状態・理想状態の明確化)
6.小さなゴールを設定する(現実的な未来の構築)
7.スケーリング(状態を数値化する)
特別なツールを使うことなく、「これはリソース(問題を解決するために利用できるすべてのもの)にならないだろうか?」と考えるようにしていると、解決の糸口がそこから見つかるようになってくる(TRIZの利用可能な資源)。
未来を現実のものにするには、自分を、すべての問題が解決したという理想の状態に置き、そのうえで、そのとき何が起こるのかを考え、明らかにする(TRIZのSLP)。リアリティーがあるように具体的に詳細にイメージしていくことが、解決へ向かう秘訣である。
PMBOK
(Project Management Body of Knowledge)
プロジェクトマネージメントの知識体系 1987年
アメリカの非営利団体PMI(Project Management Institute)
従来の「QCD」(品質・コスト・納期)の3つに着目したマネジメント手法と区別して、「モダンプロジェクトマネジメント」と呼ばれることもある。PMBOKは、プロジェクトマネジメントの遂行に必要な基本的な知識を汎用的な形で体系立てて整理したものである。
PMBOKでは、プロジェクトを遂行する際に、スコープ(プロジェクトの目的と範囲)、時間、コスト、品質、人的資源、コミュニケーション、リスク、調達、統合管理の9つの観点(「知識エリア」と呼ばれている)でマネジメントを行う必要があるとしている。
プロジェクトの流れを、「立上げ」「計画」「実行」「管理」「終結」という5つのプロセスにわける。
どのプロセスで何を作成・管理すべきかということが、9つの知識エリアごとに定義されている。例えば、スコープ管理の場合、計画プロセスでスコープの計画や定義を決定し、管理プロセスで成果物の検収やスコープの変更の管理を行う。また、スケジュール管理の場合は、計画プロセスで作業の定義や所要時間の見積、スケジュールの作成を行い、管理プロセスでスケジュールの進捗管理を行う。
I-TRIZを採用したプロジェクトが成功するか否かは、メンバーの意気込みだけでなく、そのプロジェクトの運営方法に良し悪しが大きく関係する。そのため、プロジェクトを成功させるには、「PMBOK」に限らず、何らかのプロジェクトマネジメント手法が必要になる。
ブレークスルー思考 新たな思考パラダイムのためのハイブリッド思考エンジン 1990年
ナドラー
日比野省三
日本企画計画学会
研究アプローチまたは分析アプローチと知られている従来の思考プロセス(デカルト思考)は、特定分野の問題を解決するものにすぎなった。デカルト思考は、要素還元論による真実・事実を求めるパラダイムなので、「解決策は無限にある」という思考がない。
変化の激しい現代においては、「過去の延長線上に未来はない」ため、「物事の本質・根本に戻って考える」というパラダイムが求められる。根本に立ち戻り、「どうあるべきか」を考え、「未来から学びながら」「今何をすべきか」を問う時代になってきた。解決策探索の根本は目的であり、目的(根本)は人間の認識によって変わる。
新たな思考パラダイムは、(1)ユニーク差の原則、(2)目的展開の原則、(3)未来から学ぶ「あるべき姿」の原則、(4)システムの原則、(5)目的「適」情報収集の原則、(6)参画・巻き込みの原則、(7)継続変革の原則、の7つの原則にまとめられる。
1.考え抜き(根本を問う)
(1)参画・巻き込みの原則を用いて、集合天才を創る
(2)ユニーク差の原則を用いて、場の設定を決める
(3)目的展開の原則を用いて、場の視点から目的・根本を探索し、着眼する目的(根本)を決める
(4)価値観、物差し、目標値を設定する
2.拡げ抜き(あるべき姿を探求する)
(5)未来から学ぶあるべき姿の原則を用いて、アイデアを展開しアイデア部品を出す
3.まとめ抜き(現実に実行可能にしていく)
(6)着眼目的、価値観、物差し、目標値を達成するように、アイデア部品をまとめて、新しいコンセプトを創る
(7)システムの原則を用いて、仕組みを創る
(8)目的「適」情報収集の原則を用いて、解決策を創り、実行・実現するために必要な情報を最小限に集める
4.やり抜く(実現し、成果を出す)
(9)ブレークスルー思考を使って、アクションプランを作り、実行する
(10)継続変革の原則を用いて、「次の手」を組み込み、「次の手」を打つ
「ブレークスルー思考」の威力は、目的展開によるターゲットとする目的を明確にしているところからきている。
I-TRIZの発明的問題解決(IPS)では、現実に問題を抱えているシステムについて検討するため、機能同士の原因と結果に注目している。
I-TRIZの戦略的世代進化(DE)では、未だ存在しない次世代の商品・サービスを提案する必要性から、機能同士の目的と手段に注目する。その際に、目的展開を行うことになる。
「ブレークスルー思考」では、アイデア発想を支援するツールとして、異分野の知識を積極的に利用する「比較発想法」と同様の思考プロセスを採用している。
「ブレークスルー思考」のアイデア発想の生産性を一層向上させるために、I-TRIZを採用するとよい。
バランス・スコアカード 将来の企業における業績評価 1992年
ロバート・S・キャプラン
デビッド・ノートン
戦略・ビジョンを4つの視点(財務の視点・顧客の視点・業務プロセスの視点・学習と成長の視点)で分類し、その企業の持つ戦略やビジョンと連鎖された財務的指標、及び非財務的指標を設定する。 1.ビジョンを実現可能な目標に翻訳する
2.ビジョンについて議論し、個々の業績とリンクさせる
3.ビジネス計画を立案する
4.フィードバックと学習により、戦略に修正を加える
「バランス・スコアカード」を採用することで、I-TRIZを実施した際に得られた解決コンセプトを実現することが、企業利益とどのように関連しているのかを目で見てわかるようになる。
プロジェクトメンバー以外の企業内の関係者を説得するツールの一つとして、「バランス・スコアカード」は有効である。
TOC思考プロセス
(Theory of Constraints/ Thinking-Process)
目標実現のための体系的な問題解決アプローチ 1990年代前半
ゴールド・ラット
日本TOC協会
組織が目的達成に向けて活動するうえでの本質的な問題を発見し、それを解決した""あるべき姿""を描き、それを実現するためのプランを策定する体系的な問題解決アプローチである。
何を変えるか?:変えなければならない本質的な問題を見つける。
何に変えるか?:「何を変えるか?」で見つけた本質的な問題に対する解決策を見つける。
どのように変えるか?:「何に変えるか?」で見つけた解決策を実行するための計画を策定する。
1.「何を変えるか?」を見つけるために、「現状構造ツリー」を作成する。
2.「何に変えるか?」の手段を決めるために、「対立解消図」を作成する。
3.2の手段を採用した結果を予測するために「未来構造ツリー」を作成する。
4.「どのように変えるか?」という段階で、最終的に決定した解決策を実行のための「前提条件ツリー(ロードマップ)」を作成する。
5.ロードマップに沿った解決策の実行計画である「移行ツリー」を作成する。
I-TRIZの各種手法(発明的問題解決(IPS)、不具合対策(FA、FP)、知的財産権制御(CIP)、次世代商品、サービスの提案(DE)、人、組織・経営問題(KW))に共通に使用されるツールとして、因果関係モデルがある。
「TOC思考プロセス」で使用されている各種ツリーは、機能同士の目的と手段または原因と結果を表しており、主に人や組織の問題を解決するために使用される。
I-TRIZで使用している因果関係モデルは、適用分野ごとに最適な解決指針が提示される点に特徴があるので、I-TRIZのKWが「TOC思考プロセス」を進化させ得る。
TOCfE
(TOC for Education)
教育のためのTOC
「ちゃんと」考えるためのツール 1995年
キャシー・スエルケン
TOCツールと、先見の明がある世界中の教育者のシナジーを考え、子どもと大人が効果的に考え、コミュニケーションが図れるようにすることにより、子どもと大人の教育を著しく改善する。 「ロジック・ブランチ」で、出来事、概念、主張間の原因とその結果を調べる(何を変えるのか?問題は何か?)。
「クラウド」で、思い込みを見つけて、「あちらを立てればこちらが立たず」の対立状況を解消する(何に変えるのか?解決策は何か?)。
「アンビシャス・ターゲット・ツリー」で、前向きで、大変望ましい目標であり、その達成には困難が伴うため、挑戦しがいがあると仮定されている目標を達成するための戦略的計画を立案する(どうやって変えるのか?どうやって変化を導入するか?)。
「TOCfE」は「TOC思考プロセス」の教育関係者版という位置づけである。
I-TRIZの簡易版として、アイディエーション・ブレーンストーミング(IBS)とプロブレム・フォーミュレーション(PF)との組み合わせがあるので、I-TRIZの導入段階に使うとよい。
目的発想法 経営、仕事、人生を目的、手段の体系と連鎖で考える 1995年(出版)
村上哲大
人が何かの行為を行うに際して、対象とする物事の機能を明らかにし、その中から最善の目的、最適の手段を選択し、それら目的・手段を体系化してゆく発想法である。 1.行動に関係する関心事等
2.取り組むテーマを決める
3.テーマに関する機能を収集する
4.テーマを目的語にして能動態で表現する
5.手段を発掘する
6.実施項目を決める
7.実行計画を立てる
8.段取りを考える
9.手順を決める
10.目的を考えて最端末行為を行う
「目的発想法」では、目的・手段を体系化していく際に、目的と手段の系統図を作成する。
I-TRIZの「発明的問題解決(IPS)」では、既に問題を抱えているシステムを対象とすることが多いため、原因と結果の因果関係モデルを作成する。
イノベーションを起こすような問題解決を行うなら、目的自体を疑うことも必要になる。そのため、目的手段モデルを使った目的展開が必要となる。
TOC/CCPM
(Theory of Constraints/ Critical Chain Project Management)
クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント
無理なく期間短縮を実現するプロジェクト管理 1997年
ゴールド・ラット
ゴール・コンサル・コンサルティング(株)
クリティカルチェーンと呼ばれる「プロジェクトのスケジューリング方法」とプロジェクトマネージメントと呼ばれる「プロジェクトの管理統制方法」からなる新しいプロジェクトの管理手法である。今までの計画管理方法(PMBOKなど)と大きく違う点は、(1)「クリティカルパス」ではなく「クリティカルチェーン」を管理する、(2)各タスク(業務)の時間見積り方法、(3)生産の揺らぎを吸収する3種類のバッファ、(4)重要なリソースの管理・活用方法、(5)プロジェクトの進捗管理方法、(6)マネジャーの重要業務(プロジェクトの進捗状況によるアクション)である。特に、人間が中心に進められる業務への対応策など、不確定性の高い業務をどのように、計画・管理して行くかが明確にされている。 1.プロジェクトの目的を達成するために必要なタスクを
工程の後ろから逆方向に、必要条件として抽出する。
2.依存関係に着目して抽出したタスクを並べる。
3.同時期のリソースの重複をなくし、クリティカルパスを認識する。
4.クリティカルパスの安全余裕を切り取り、切り取った合計量の半分量を工程の最後に「プロジェクトバッファ」として配置する
5.クリティカルパス以外については、クリティカルパスに合流するライン毎に安全余裕を切り取り、切り取った合計量の半分量を、クリティカルパスとの合流直前に「合流バッファ」として配置する(合流する作業の遅れからクリティカルパスを守る働きがある)。
プロジェクトマネージメントとしては「PMBOK」が標準的に使用されているが、「制約条件理論(TOC)」の発想を受け継いでいる「クリティカルチェーン・マネージメント(CCPM)」の方が実践的(現場向き)である。
ASIT
(Advanced Systematic Inventive Thinking)
先進の構造化発明思考法 1999年
ロニ・ホロウィッツ
ジェイコブ・ゴールデンバーク
ドリュー・ボイド
既存の製品を最初に、ASITの5種の思考ツールのうちの一つの線に沿って (概念的に) 変容させる。そのとき、 特定の目標を想定していない。第2段階において、 その新しい (仮想的な) 製品を可能性のあるマーケットとマッチさせる。
そのマーケットは次の質問に答えることによって同定される。「われわれの変容させた製品によって、誰が、どんな状況下で、益を受けるだろうか?」
一つの閉世界は, 「その製品を作っているオブジェクトたちのタイプと、その製品のすぐ周辺にあるオブジェクトたちのタイプとの集合」として定義される。ASITの閉世界原理は, 開発者に対して, もとの製品と同じ「世界」を共有する新製品を開発するように制約する。
閉世界条件は、開発者に、既存の製品を置き換えたり、いままで存在しなかった新しい要素を追加したりする代わりに、既存の製品のバリエーションを着想するように制約する。このようにして, ASITで生成された新しいアイデアは, 研究開発努力をまったく必要としない。
1.統合法
既存の構成要素の一つに新しい使い方を与えることによって問題を解決する。
2.乗算法
既存のオブジェクトのコピーでわずかに変容させたものを、現在のシステムに導入することにより、問題を解決する。
3.除算法
一つのオブジェクトを分割して、それらを部分として再編成することにより問題を解決する。
4.対称性の破壊の方法
対称的な状況を非対称な状況に変換することにより問題を解決する。
5.オブジェクトの除去の方法
一つのオブジェクトをシステムから除去することにより、問題を解決する。
機能を決定する前に一つの形を創ることによってアイデアを作り出すことは、心理学者のロナルド・A・フィンクらによって、「形に機能がついてくる 」思考として発表されている。一連のすばらしい実験において、ロナルド・A・フィンクらは, 「機能より前に形を決定するように制約されたとき、各人は一層創造的になる」ことを示した。
「構造化発明思考法(SIT)」から派生した手法には、USITとASITがあるが、使い勝手としてはASITの方がよい。
LSS
(Lean Six Sigma)
リーンシックスシグマ
狙いどおりの成果を早く出すための活動の実現 2001年
GE
ムダを排除して業務効率の向上を図るリーン生産方式と、作業のバラツキを制御して高品質なビジネスプロセスの確立を目指すシックスシグマを組み合わせたマネジメント手法。
活動開始時に対象とする業務プロセスが存在する場合に、DMAIC(ドマイク)という検討ステップに従い、従来の業務プロセスを改善して効果を生み出すために行う。
DMAIC(ドマイク)
Define(定義):取り組むテーマを決める
Measure(測定):現状のプロセスを把握する
Analyze(分析):問題の発生の原因を特定する
Improve(改善):チームで改善案を出してみる、改善案を選んで試す
Control(定着):取り組むテーマを決める、結果を見て正しく評価する
「リーンシックスシグマ」は、生産やその他の業務プロセスの改善のための手法である。
企画、開発、設計段階の改革、改善を考えるのであれば、I-TRIZの手法と「リーン製品開発方式」との組合せを採用するとよい。
パパ・ママ創造理論 システム観に基づいた創造理論(ブレークスルー思考を進化させた創造理論) 2004年
日比野省三
形や現象ではなく、その物事の「目的」を考え、「どうあるべきか」という観点から問題を解決する。創造とは異種の組合せであって、異種を統合する「軸」は「目的」である。
目的(パパ)を変えると、タイプの違う新しいアイデア(赤ちゃん)が生まれてくる。
アナロジー(ママ)の構造である「コンセプト」を移転することで新しいアイデア(赤ちゃん)が誕生する。
1.課題の設定
2.場の設定
いつ、どこ、だれ
3.目的展開
優れたパパを見付ける、目的展開し再定義、着眼
目的を決める
4.価値観
優れたパパの衣装、大金を払う価値があるか?
5.ママの衣装
異分野の優れたママを見付ける、例えば・・・のように
6.ママの構造
目的を実現できる構造は何か
7.赤ちゃんの獲得
優れたパパの価値観を達成できる赤ちゃん
8.赤ちゃんの命名
ターゲットコンセプトを決める
9.企画計画
「パパ・ママ創造理論」は「ブレークスルー思考」の簡易版という位置づけである。
I-TRIZでは、技術以外の一般的な問題解決向けの「ナレッジ・データベース(KW)」という手法があるので、I-TRIZの導入段階に使うとよい。
リスクマネジメント 組織の価値創造の最大化 2006年(会社法の施行)
ISO31000
(Risk management - principles and guidelines)
リスクマネジメントは、経営者の責任において実施すべき経営管理業務(マネジメント)である。管理する対象は、起きてしまった事象や不祥事ではなく、これから影響を与える可能性のある「リスク」である。組織として考えるべきリスクは、組織自体や従業員に影響を与えるリスクと、組織が消費者や社会に対して与える可能性のあるリスクの両方で、どちらも管理しなければならない。
組織のリスク例
・社会的リスク(人事・組織、社会対応、法務)
・工学的リスク(製品安全、安全・環境、情報管理)
・経済的リスク(販売、金融・財務、物流、製品品質)
1.リスクマネジメント方針の表明
2.リスクの特定・リスク分析
帰納的手法:イベントツリー分析等(被害事象の発生確率を算定する)
演繹的手法:フォールトツリー分析等(頂上事象の発生確率を算定する)
3.リスク評価(発生確率と被害規模によって4つに分類)
4.リスクマネジメントの目標の特定
5.リスク対策の選択(低減、移転、保有、回避)
6.リスクマネジメントプログラムの策定
7.緊急時における対応手順の策定及び準備
8.リスクマネジメントのパフォーマンス評価
問題は現在の認識であるが、リスクは今後に起こり得る現象に対する認識であり、問題と同じく主観的期待と客観的事実のギャップがリスクである。リスクとは自らの目的(理想)が達成できない恐れのことである。
経営全般のリスクを回避するために使用できる定性的な手法としては、I-TRIZの「不具合予測、予防(FP)」が有効である。